税理士の独立開業の流れ
必要な準備、かかる費用と、メリット・デメリット

税理士の独立開業の流れ  必要な準備、かかる費用と、メリット・デメリット
公開日:
2021/04/30
最終更新日:
2022/06/07
 
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税理士の資格を得た多くの人にとって、「独立開業して稼ぐ」ことが目標になるでしょう。ただし、そのためには、きちんとステップを踏まなくてはなりません。準備を怠ると、「こんなはずではなかった」ということもあり得ることに、注意が必要です。今回は、税理士の独立開業に必要なこと、気をつけるべき点を中心に解説します。

税理士の働き方

まず、資格を持って仕事をする税理士には、大別して次のような働き方(立場)があることを確認しておきましょう。

所属税理士

その名の通り、税理士事務所や税理士法人、あるいは一般企業に所属して働く税理士です。

社員税理士

上記の所属税理士と同じく、税理士法人で働く税理士ですが、所属税理士と異なり、税理士法人の役員であり、代表権があることもあります。

開業税理士

独立し、自らが事務所を開設して働く税理士です。“一国一城の主”ですから、仕事の方針や働き方などを自分で決めることができます。

次の章では、この独立開業までの流れを、順を追って説明します。

独立開業に必要なステップ

(1)税理士試験を受験し、合格する

税理士資格を得るためには、年に1回の税理士試験を受験し、合格しなくてはなりません。
科目は合計11つありますが、うち5科目(会計2科目、税法3科目)の合格が、税理士資格を得るために必要な条件です。弁護士や公認会計士試験と並ぶ難関の国家試験ですが、合格した科目を翌年以降に「持ち越す」ことができるところが、他の士業との違いです。

(2)2年以上の実務経験を積む

試験に合格しても、それで税理士を名乗れるわけではありません。合格後、日本税理士会連合会の税理士名簿に登録する必要があるのですが、その要件として「租税または会計に関する実務経験を2年間積む」ことが定められているのです。実務経験を積むには、税理士事務所・会計事務所・税理士法人で働くのが一般的です。

(3)日本税理士会連合会に税理士登録をする

実務経験の後、税理士名簿に登録されれば、晴れて税理士の資格を得ることができます。その際、登録地域の税理士会と日本税理士会連合会による審査(面談、調査)が行われますが、いわゆる”ふるいにかけるようなもの”ではなく、例えば「かつて税に関連した不正行為を働いたことがある」といったよほどのことがない限り、登録を拒否されることはありません。詳しくは、税理士会が発行している「税理士登録の手引」を参照してください。

(4)独立開業のための資金を調達する

独立のためには、後で述べるような資金が必要になります。登録までの間に用意できていればいいのですが、そうでなければ計画的に蓄えなくてはなりません。開業に求められるスキルを磨くという意味でも、まずは所属税理士として研鑽を積みながら資金の準備を進めるのがベターでしょう。

(5)独立開業

所属税理士から開業税理士となる際にも、税理士会への届け出が要ります。もちろん「独立したのはいいけれど、顧客がまったく獲得できない」というような事態を避けるために、開業予定エリアに顧客候補がどれだけいるのか、といった事前の「市場調査」は欠かせません。

苦労して独立開業するのは、所属税理士にはないメリットがあるからです。しかし、独立によるデメリット、リスクも存在します。次の章では、独立開業のメリットデメリットについて説明します。

税理士が独立開業するメリット

では、具体的には独立開業にはどのようなメリットがあるのでしょうか?

収入UPの可能性がある

事務所の一員として働く場合には、収入は給与の形で受け取ることになります。もちろん、売上増に貢献すれば給料は上がるかもしれませんが、どう評価されるのかは、あくまでも他者(所長、上司)の判断に委ねられています。
一方で、独立開業すれば、自らの仕事に応じて報酬を受け取ることができます。顧客から高い評価を受けることで、年齢などに関係なく高収入を得られる可能性が広がるわけです。

社会的地位が上がる

経営者・事業主はもちろん、社会人であれば税理士という国家資格を知らない人はほぼほぼいません。難関の国家試験にパスしていることから、社会的な地位は高く、信用度も抜群。その信用度の高さを武器に仕事をすることができるのも、士業ならではの特長です。

自由に事業展開ができる

所属税理士には、事務所の方針に基づいた「チームワーク」が求められます。これに対して開業税理士は、自分で事務所の方針を決め、自由に事業を展開することができます。
また、働き方を自分で決められるのも、大きな魅力と言えるでしょう。子育てや介護、あるいはプライベートな時間を大切にしながら仕事をすることが可能です。

本業以外で稼ぐこともできる

税理士としての実績を積めば、セミナーや講演などで収入を得る道も開かれます。これも、独立開業すればこそのメリットです。

ただし、これらのメリットは、本人に独立してもやっていける能力と努力があって、初めて享受できるものでもあります。

税理士が独立開業するデメリット

次に、独立開業のデメリットについても見ていきましょう。

「税理士業」以外のことも覚える必要がある

先ほど、信用度の高さを武器にできると言いましたが、それを掲げているだけでお客さまがやってくるわけではありません。
独立した以上、顧客獲得のための営業戦略を練り、自ら実行する必要があります。「営業は苦手」「コミュニケーションはあまり得意ではない」などとは言っていられない現実があるのです。

担当顧客を引き継ぐのが難しいケースも

独立開業とはいっても、「ゼロからのスタート」は厳しいものです。そんなときに助かるのが、所属税理士時代のお客さまなのですが、事務所によっては独立の際に担当顧客を引き抜くことを禁じている場合があります。

業務上のすべての責任を引き受けなくてはならない

所属税理士ならば、仕事上の問題が起きても、チーム力でカバーしてもらえます。一時的に事務所の売上が落ちたとしても、給与には響かなかったかもしれません。しかし、“一国一城の主”である開業税理士になれば、責任はすべて自分に降りかかってきます。さらに、人を雇えば、その人の生活も含めて責任を負う立場になるわけです。

独立開業には費用がかかる

独立開業をするには、意外と費用がかかります。なるべく安く済ませる場合には工夫が必要です。
具体的にどのような費用がかかるかは、次章で解説します。

福利厚生を利用できなくなる

所属税理士には、自由度が低い半面、有給休暇や育児休暇、住宅手当をはじめとする事務所の福利厚生を利用できるというメリットがありました。しかし独立すれば、有給休暇もありません。
事業が軌道に乗るまで、プライベートな時間を確保するのは難しいのが現実のようです。

税理士の独立開業にかかる費用とは

では、独立開業するには、どんなコストが発生するのでしょうか? 具体的に見ていきましょう。

税理士登録費用・会費

「税理士として認められる」ためのコストを、20~30万円みておく必要があります。

  • 登録免許税 6万円
  • 登録手数料 5万円

日本税理士会連合会の年会費は、地域ブロックとその下の支部にそれぞれ納める仕組みになっていて、初年度の会費に入会金を含めた合計で、10~20万円(会費は地域によって異なります)です。
また、所属する税理士会によっては、上記以外の費用がかかる場合があります。

オフィスにかかる費用

賃料

立地がよくきれいな事務所ほど仕事はしやすく、顧客獲得にも有利な半面、家賃は高額になりがちです。事務所選びは、その費用対効果をどう考えるかに尽きるでしょう。
注意したいのは、基本的に家賃半年分~1年分相当の保証金が必要になるなど、普通にアパートの部屋を借りる場合などに比べ、初期費用が大きくなることです。地域によって異なりますが、仮に家賃10万円の物件を借りるとすると、仲介手数料なども含め100万円近くの出費を見込んでおく必要があるでしょう。

機器類などのコスト

パソコン(購入費10万円程度)、スキャナー(1~5万円)、プリンター(1~5万円)は、税理士の仕事に欠かせない“三種の神器”と言えます。
顧客データ流出のリスクを軽減する意味でも、パソコンは仕事専用のものを揃えたいものです。税理士はこれから顧客となるお客様と会ったり、顧問先を訪問したりすることも多いので、出先に持ち出せるノートパソコンがいいでしょう。
スキャナーは、顧客から預かった資料などをパソコンに保存するために、不可欠のツールです。保管義務のない「紙」を取り込むことで、省スペースを図ることができます。

税務・会計ソフト費用

税務・会計ソフトも、税理士業務には欠くことができません。ただ、ソフトの機能や導入後のサポートに関しては、さまざまなものがありましから、自分の業務に見合ったものを選択する必要があります。
最近は、パッケージ型ソフトに加えて、クラウド型ソフトが登場し、使い勝手も向上しました。税制などは目まぐるしく変わるため、アップデートが容易なもの、あるいは自動アップデートしてくれるものが便利です。

営業・マーケティングにかかる費用

営業・マーケティングのための費用として、例えば、次のようなコストを織り込んでおく必要があるでしょう。

  • 名刺代 1枚10円程度~
  • チラシなどの製作費 3~10万円
  • ホームページ開設費 20~100万円
  • ロゴ製作費 3~5万円

その他の費用

その他にも、開業の方法によっては、以下のような費用がかかります。

  • 事務机や応接セット 20万円
  • 各種備品 10~15万円

生活費

忘れてならないのが、生活費です。
開業時に確実な売上がどのくらい見込めるのかにもよりますが、不測の事態にも備えて、少なくとも半年分の生活費は確保しておくようにしましょう。

できるだけ安く独立開業するには?

独立開業には意外と費用がかかることを述べましたが、出来ればなるべく安く済ませたいものです。では、費用をかけずに独立開業をするにはどうすればよいのでしょうか。

自宅で開業する

さきほど説明したように、事務所を借りようとすると、それなりの初期費用+毎月の家賃を覚悟しなくてはなりません。
自宅に事務所のスペースを確保できるのなら、とりあえずそこを拠点に開業するのもアリでしょう。

レンタルオフィスを利用する

「独立した事務所を借りるのは厳しいけれど、自宅というのも…」という場合には、レンタルオフィスを利用する、という方法があります。
事務机や電話、インターネット環境などが整っているのは大きなメリットで、少ない費用ですぐに仕事を始めることができます。

会計システムまわりの料金を厳しくチェック

税理士業務に欠かせない会計システムですが、スペックや付加サービスの内容によって、トータルの支払いに差が出ます。特に、高価な料金プランだと、独立開業したての税理士には不要な機能が入っていたりもします。
開業当初は、必要なぶんの機能が入った料金プランを選ぶなどで、コストを切り詰めましょう。

集客ツールは、まず無料のものから

集客ツールは、顧客獲得の大きな武器になります。ただし、ここにコストを掛け過ぎては、本末転倒。最初は無料で利用できるサービスを使ってみるのがお勧めです。

まとめ

税理士として独立開業することで、自由な事業展開が可能になり、それに伴って高収入を得る道も開けます。ただし、そのためには必要な手順を踏み、開業資金も用意する必要があります。
記事を参考に、しっかり準備を進めてください。

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この記事の執筆者
税理士紹介センタービスカス編集部
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