顧問税理士の変更時の引継ぎに必要な書類や解約時の断り方のベストアンサーとは?
- 最終更新日:
- 2026/01/21

- この記事の監修者
- 白兼公認会計士・税理士事務所
代表 白兼 道夫(公認会計士・税理士・行政書士)
スムーズな税理士変更・引継ぎのために
税理士変更は「解約の自由」が前提ですが、契約書の内容によって手続きの円滑さが大きく変わります。特に契約期間の定め、違約金条項、データ返却の取り決めは、変更前に必ず確認すべき3つのポイントです。これらを事前に押さえておくことで、引継ぎの混乱や想定外のコストを回避できます。
税理士はいつでも解約できる?
顧問税理士の変更は企業・事業主の自由ですが、契約書に定められた「契約期間」と「解約予告期間」には注意が必要です。契約書に「契約期間満了日の1ヵ月前までに双方より意思表示のない限り、自動継続する」といった条項がある場合、10日前の解約申し出では相手方に拒否される可能性があります。
解約を検討する際は、まず現在の契約内容をチェックし、契約書の定めに沿った手続きを踏むことが円満解約の第一歩です。自動更新期間に入っている場合でも、税理士との話し合いにより、一定の違約金を支払って合意解除することは可能です。ただし、これは相手方の同意が前提となります。
解約したら「違約金」は絶対に請求される?
違約金は契約違反があった場合に請求されるもので、契約書に違約金条項がなければ一方的に請求される義務はありません。契約期間を守り、所定の予告期間内に解約を申し出た場合、特段の契約違反がない限り違約金は発生しないのが通常です。
ただし、期中解約や決算料の前払いが絡むケースでは注意が必要です。「決算料は年間顧問料に含まれる」という報酬体系の場合、税理士側が「決算を見越して前広に対応していた」として費用を求めるケースがあります。契約書の違約金条項と決算料の扱い(別建てか、年間報酬に含まれるか)を事前確認し、やむを得ず期中解約する場合は違約金の根拠と金額を書面で確認してください。
変更前の税理士から会計データを引き継げる?
紙の書類(決算書、申告書控え等)は民法上の所有権が顧問先にあるため、税理士は返却義務を負います。一方、電子データは「有体物」ではないため民法上の所有権の対象外となり、返却義務の法的根拠が曖昧です。
そこで重要になるのが顧問契約書での明記です。税理士の業務成果物に電子データも含まれること、その引渡方法(形式、期限等)を契約書に定めておけば、返却を求める法的根拠が明確になります。契約書に定めがない場合でも、会計データは顧問先の財産であるという事実を根拠に、書面で正式に返却を依頼することが重要です。
税理士変更で引き継ぐべき書類やデータ
税理士変更で最も重要なのは、必要な書類とデータを漏れなく返却してもらい、新しい税理士が業務を開始できる状態に整えることです。返却が必要なものは大きく「紙の書類」「電子データ」「会計ソフトのアクセス権限」の3つに分類されます。特に会計ソフトのデータ形式や過去の申告書控えは、税務調査時にも必要となるため、返却期限と形式を明確に指定して依頼しましょう。
変更前の税理士から返却してもらうもの一覧
返却が必要な書類とデータは、旧税理士に依頼するものと自社で準備するものに分かれます。以下のチェックリストを参考に、返却依頼の際は「いつまでに」「どの形式で」返却してもらうかを明確に伝えてください。
| 項目 | 内容 | 自社準備 | 旧税理士依頼 |
|---|---|---|---|
| 会計データ | 総勘定元帳、試算表、仕訳帳 | ○ | |
| 税務書類 | 確定申告書控え、税務代理権限証書 | ○ | |
| 契約書類 | 顧問契約書、覚書等 | ○ | |
| 請求関係 | 請求書、領収書、通帳コピー | ○ | |
| 法定調書 | 源泉徴収票、支払調書等 | ○ | |
| 届出書類 | 税務署・市町村への届出書控え | ○ | |
| 会計ソフトデータ | バックアップファイル、アクセス権限 | ○ |
紙書類とデジタルデータが混在する場合は、重複チェックを必ず行ってください。返却された紙書類はスキャンしてPDF化しておくと、検索性が向上し今後の業務効率化につながります。
引き継ぐべき会計データ
会計データの引継ぎで特に重要なのは、総勘定元帳・試算表・仕訳帳の3点セットです。これらは新税理士が会社の財務状況を把握し、前任税理士の会計処理方法を理解するために不可欠です。過去の数字は税務調査時にも必要となるため、最低でも過去3年分(法人税の更正期間)、できれば過去5年分を確保してください。
会計ソフトのデータは、バックアップファイル形式での受け渡しが基本です。ただし、クラウド型会計ソフトの場合はアクセス権限の移譲、インストール型の場合はファイル受け渡しと方法が異なります。使用している会計ソフトの種類を新税理士に伝え、必要なデータ形式を確認してから旧税理士に返却依頼を行いましょう。
会計ソフトごとのデータ引継ぎ方法・注意点
弥生会計:バックアップファイル(.ydb形式)をUSBメモリ等で受け渡し。パスワード設定がある場合は事前確認が必要です。
マネーフォワードクラウド会計:管理者権限の移譲または新規招待を実施。銀行連携設定は新税理士側で再設定が必要になります。
freee:アドバイザー権限の変更手続きを実施。API連携がある場合は新税理士側での再設定が必要です。
TKC・勘定奉行:専用形式でのデータエクスポートを実施。システム会社経由での手続きが必要な場合があります。
新旧税理士で会計ソフトが異なる場合、CSV形式での変換が必要となり、勘定科目の対応表作成や仕訳の見直しが発生します。この場合、移行には通常より1〜2週間多く時間がかかるため、データ移行の完了予定日を新税理士と共有し、業務開始日から逆算してスケジュールを組んでください。
新しい税理士にも確認が必要
新しい税理士に「何が必要か」を事前に確認し、旧税理士への返却依頼に反映させることが、引継ぎをスムーズに進める鍵です。現在進行中の資料だけでなく、過去の勘定元帳や決算書も必要になります。新税理士が業務を開始するには、会社の状況や前任税理士の会計処理方法を理解する必要があるためです。
過去の数字は税務調査が入った際にも必要となるため、最低でも過去3年分(法人税の更正期間)、できれば過去5年分の申告書控えと総勘定元帳を確保してください。新税理士に必要な書類リストを作成してもらい、それを基に旧税理士へ返却依頼を行うのが確実です。
変更前税理士の解約時にどう断るか
契約上の問題がなくても、解約の伝え方次第で引継ぎの協力度が大きく変わります。税理士も難関資格を手にした自負があり、仕事を失うことへの抵抗感もあります。感情的なしこりを残すと、書類返却の遅延や引継ぎ拒否といったトラブルに発展するリスクがあるため、円満な解約を目指す配慮が必要です。
解約のタイミングを明確に伝える
「○月末で契約解除したい」など、解約日を具体的な日付で明示してください。契約書の契約期間・自動更新条項を踏まえた上で、「いつ解約するのか」を曖昧にせず伝えることが、後のトラブルを防ぐ第一歩です。口頭だけでなく、書面やメールで解約日を記録に残すことを推奨します。
「解約の理由」には、ひと工夫
解約理由は率直に伝えるのが必ずしも得策ではありません。「他にいい先生が見つかった」「報酬が高すぎる」といった理由を正直に伝えると、相手が気分を害し、そこからの話が円滑に進まなくなる可能性があります。仕事に問題があって交代を考えるケースでも、難点をあげつらう対応は避けるべきです。
状況に応じて「知り合いから頼まれた」「親族の紹介で断れなかった」など、やんわりと「かわす」理由を用意することも検討してください。円満な解約と確実な書類返却を優先するなら、建前を伝える選択も現実的です。
「電話のみ」は避けた方が無難
解約の意思表示は、メールなど履歴・証拠が残る形で行うのがベストです。電話のみで伝えた場合、後で「聞いていない」「解約の期日が違う」といったトラブルになるリスクがあります。電話で伝える場合は、やり取りを録音しておくか、電話後に内容確認のメールを送付してください。
「顧問契約解除合意書」を取り交わせるのがベスト
顧問契約解除合意書は、双方が契約解除に合意したことを証明する文書です。これがなくても契約解除は成立しますが、取り交わしておけば後のトラブルを防ぐ武器になります。解約日、返却書類の範囲、返却期限などを明記し、双方署名・捺印した書面を保管してください。
一方、「顧問契約解除通知書」は合意とは異なり、今の税理士に対して一方的に「通知」するものです。解約の意思を示した証拠にはなりますが、合意書ほどの強制力はありません。相手に確実に届いたことを証明したい場合は、配達証明付き内容証明郵便で送付してください。

- 記事監修者からのワンポイントアドバイス
- 顧問税理士を変更する場合は不満が理由となることが多いですが、契約終了までの業務が円滑に進み、後任税理士への引き継ぎがスムーズに行えるように、「知人からの依頼を断れなかった」などの建前を伝えるのも一案です。大人の対応を心がけることで、双方にとって円満に契約を終えられるでしょう。
- 白兼公認会計士・税理士事務所 代表 白兼道夫
税理士変更時によくあるトラブルと対策
税理士変更時のトラブルは、書類の返却漏れ、システム登録情報の変更忘れ、解約時期の先延ばし要求、後任税理士とのミスマッチの4つが典型例です。これらは事前準備と確認作業で回避できるものばかりですが、実際には見落とされやすいポイントでもあります。トラブルを未然に防ぐには、返却書類のチェックリスト作成と、新旧税理士の業務範囲を明確に線引きすることが重要です。
必要書類の返却漏れ
最も多いトラブルが、返却してもらうべき書類やデータの一部が漏れているケースです。総勘定元帳は返却されたが試算表がない、直近年度の申告書控えはあるが過去3年分が揃っていない、といった事態が発生します。返却漏れは新税理士の業務開始を遅らせ、最悪の場合は申告期限に間に合わないリスクもあります。
対策として、返却してもらう書類のリストを作成し、双方で確認してください。前述の返却書類一覧表を印刷し、受け取った書類にチェックを入れながら確認すると漏れを防げます。特に電子データは「送った・送っていない」の水掛け論になりやすいため、受領確認書を取り交わすことを推奨します。
e-Taxや会計ソフトの登録情報変更忘れ
e-Taxの税務代理権限や会計ソフトのアドバイザー登録を変更し忘れると、税務署からの通知が旧税理士に届き続けます。税務調査の連絡や還付金の通知が旧税理士に届いてしまい、重要な情報が自社に伝わらないまま期限を過ぎるケースもあります。
対策として、税理士変更後すぐにe-Taxの利用者識別番号にログインし、税務代理権限証書の内容を確認・変更してください。会計ソフトについても、クラウド型の場合はアドバイザー権限の変更手続きを行い、旧税理士のアクセス権限を削除する必要があります。eLTAX(地方税の電子申告)の登録情報も忘れずに変更しましょう。
契約解除を断られる・解約時期の先延ばしを求められる
「決算作業が途中なので今は解約できない」「あと3ヶ月待ってほしい」といった解約時期の先延ばしを求められるケースがあります。税理士側の事情を優先すると、新税理士の業務開始が遅れ、最適な変更タイミングを逃してしまいます。
対策として、まず顧問契約書の契約期間・自動更新条項・解約予告期間を確認してください。契約書の定めに沿っていれば、解約時期の先延ばしに応じる義務はありません。やむを得ず先延ばしを受け入れる場合は、「○月末までに必ず解約」という期限を書面で明確にし、その間の業務範囲(月次処理のみ、決算業務まで等)も文書で取り決めてください。
後任の税理士と上手くいかない
税理士変更後に「期待していたサポートが受けられない」「業界知識が不足している」といったミスマッチが発覚するケースです。変更前の不満が解消されないばかりか、新たな問題が発生することもあります。
対策として、後任税理士を選ぶ段階で、使用している会計ソフトへの対応可否、自社の業界知識の有無、サポートしてほしいテーマ(節税提案、資金調達支援等)の実績を確認してください。可能であれば契約前に面談を複数回行い、コミュニケーションスタイルや対応速度が自社に合うかを見極めることが重要です。
トラブル回避のための事前準備
税理士変更に必要な手続きを事前に把握しておくことが、トラブル回避の第一歩です。契約書の確認、返却書類リストの作成、e-Tax・会計ソフトの登録情報変更、税務署への届出など、やるべきことを時系列でリスト化してください。
また、社内での情報共有と合意形成も重要です。経理担当者だけでなく、経営者や関係部署にも税理士変更の理由とスケジュールを共有し、業務への影響を最小限に抑える体制を整えましょう。特に決算期や確定申告期をまたぐ変更の場合は、社内の協力体制が不可欠です。

- 記事監修者からのワンポイントアドバイス
- 現在の顧問税理士から資料やデータが返却されない場合は、まずは後任の税理士に相談するのがよいでしょう。専門家のサポートを受けることで、スムーズに引き継ぎが進むことが期待できます。
- 白兼公認会計士・税理士事務所 代表 白兼道夫
まとめ
税理士変更で最も重要なのは、契約書の確認、円満な解約交渉、必要書類の確実な返却の3点です。
まず顧問契約書で契約期間・自動更新条項・違約金条項を確認し、契約書の定めに沿った解約手続きを踏んでください。解約日は「○月末」と具体的な日付で明示し、書面やメールで記録に残すことがトラブル防止の第一歩です。
解約理由の伝え方は引継ぎの協力度を左右します。「報酬が高すぎる」といった率直な不満より、「知人からの依頼で断れなかった」といった建前を用意するほうが、感情的なしこりを残さず円満に解約できます。
返却が必要な書類とデータは、新税理士に事前確認した上で旧税理士へ依頼しましょう。総勘定元帳・試算表・仕訳帳は最低3年分(できれば5年分)を確保し、返却書類のチェックリストを双方で確認することで返却漏れを防げます。e-Taxや会計ソフトの登録情報変更も忘れずに実施してください。
よくある質問
顧問税理士の変更はいつでもできますか?
顧問税理士の変更は企業・事業主の自由ですが、契約書に定められた契約期間と解約予告期間を確認し、契約書の定めに沿った手続きを踏む必要があります。自動更新条項がある場合は、更新日の1ヶ月前など指定された期限までに解約を申し出てください。
税理士の解約時に違約金は発生しますか?
契約書に違約金条項がない場合、通常は発生しません。ただし、期中解約や決算料の前払いが絡むケースでは、税理士側が費用を求める場合があるため、契約書の違約金条項と決算料の扱いを事前確認してください。
税理士から返却してもらうべき書類は何ですか?
総勘定元帳、試算表、仕訳帳、確定申告書控え、税務代理権限証書、源泉徴収票、支払調書、税務署・市町村への届出書控え、会計ソフトのバックアップファイル、e-TaxとeLTAXの利用者識別番号と暗証番号などです。新税理士に事前確認し、必要な書類リストを作成した上で旧税理士に返却依頼してください。
新しい税理士に引き継ぐ際の注意点は何ですか?
新税理士に「何が必要か」を事前確認し、旧税理士への返却依頼に反映させることが重要です。過去の勘定元帳や決算書は最低3年分(できれば5年分)を確保し、会計ソフトのデータ形式も新税理士に確認してください。
e-Taxや会計ソフトの登録情報はどう変更しますか?
税理士変更後すぐにe-Taxの利用者識別番号にログインし、税務代理権限証書の内容を確認・変更してください。会計ソフトはアドバイザー権限の変更手続きを行い、旧税理士のアクセス権限を削除します。
税理士会に相談する方法はありますか?
解約や書類返却でトラブルが発生した場合は、税理士が所属する税理士会の「紛議調停委員会」に申し立てができます。税理士業務に起因するトラブルを裁判によらず話し合いで解決する制度で、調停は非公開で費用もかかりません。
記事監修者 白兼税理士からのワンポイントアドバイス
税理士を変更する際の理由はさまざまですが、スムーズな引き継ぎのためには、まずは後任の税理士と合意してから、現在の税理士に解約の意思を伝えることが重要です。税理士によって、必要な引継書類やデータが違う場合があるため、後任の税理士にしっかり確認した上で、必要な返却書類や返却期限を明確にして今の顧問税理士へ解約希望を伝えしましょう。それでも、書類が返却されない場合や、引継ぎが円滑に進まないケースもあります。その際は、後任の税理士に相談し、専門的なサポートを受けながら対応することで、スムーズな移行が期待できます。

- この記事の監修者
- 白兼公認会計士・税理士事務所
代表 白兼 道夫(公認会計士・税理士・行政書士)
- 税理士・税理士事務所紹介のビスカス
- 税理士探し相談ガイド
- 税理士・税理士探し >
- 顧問税理士の変更時の引継ぎに必要な書類や解約時の断り方のベストアンサーとは?
