IPO支援に強い税理士の選び方。依頼するメリット・デメリットとは?

- 最終更新日:
- 2025/07/23

- この記事の監修者
- 髙谷公認会計士・税理士事務所
代表 髙谷 武司(税理士・公認会計士)
IPOとは?
IPO(新規公開株)とは
IPO(Initial Public Offering)は「新規公開株」の略で、未上場企業が初めて証券取引所に上場し、自社の株式を一般投資家に公開することを指します。これまで経営者や特定の関係者のみが保有していた株式を、不特定多数の投資家が売買できるようにする制度です。
上場していない会社の株式は、価値の評価が難しく、売却も困難です。しかし、上場することで、会社の業績や成長力が客観的に評価され、株式に適正な価格がつきます。将来性が高いと判断されれば、株を欲しがる投資家が増え、株価は上昇し、企業は多くの資金を調達できるようになります。
IPOのメリット
IPOの最大のメリットは、株式市場で不特定多数の投資家に株式を買ってもらうことで、潤沢な資金を調達できる点です。調達した資金を設備投資や研究開発費に回せば、会社のさらなる成長が期待できます。
その他にも、IPOには以下のようなメリットがあります。
- 社会的信用度の向上:上場審査をクリアしたことで、社会的な信用度が大幅にアップし、金融機関からの融資条件が改善されたり、取引先との信頼関係が強化されたりする効果があります。
- 知名度向上による人材採用力の強化:会社の認知度が高まり、優秀な人材の採用において有利になります。上場企業で働くことを希望する求職者は多く、採用活動の幅が広がります。
- 経営体制の強化:上場企業はそれにふさわしいガバナンス(企業統治)が求められ、透明度の高い経営が強いられるため、社内体制の強化が図られ、経営の効率化や組織力の向上が期待できます。
IPOのデメリット
株式を公開することで得られるメリットがある一方で、IPOには注意すべきデメリットも存在します。
主なデメリットは以下の通りです。
- 経営権リスク:株式を公開している以上、力づくで株式の過半を握られる経営権を奪われるリスクがあります。株主は保有比率に応じて経営に関与する権利を持つため、経営の自由度が制限される可能性があります。
- コスト増加:上場企業にふさわしい社内体制の構築・維持には多額のコストが必要です。監査報酬、IR活動費、株主総会運営費など、様々な費用が継続的に発生します。
- 株主からのプレッシャー:株価の維持などに対する株主からのプレッシャーは強く、四半期ごとの業績発表では常に結果が求められます。経営上のミスや不祥事が発覚すると、より強い批判にさらされるのも上場企業の宿命といえるでしょう。
IPOの流れと準備に必要な体制
IPOまでのスケジュールと主なステップ
IPOを実現するには、証券取引所による厳格な審査をパスしなくてはなりません。審査対象期間は、上場申請の直前の2期(2年)となっており、それ以前の準備期間も含めると、最低3年の時間が必要です。
IPOまでの主なステップは以下の通りです。
N-3期以前
IPOの意思決定を行い、監査法人の選定を行います。この段階で、IPO戦略の策定や内部体制の見直しを開始します。
N-3期
監査法人による「課題抽出調査(ショートレビュー)」を受けます。これは、上場を目指す企業が準備過程で検討すべき課題を明確化するのが目的で、認識された課題は優先順位を付けて改善を図っていきます。
N-2期
ショートレビューで指摘された事項の改善が図られていることを前提に、この期から監査法人による監査が開始されます。また、この期までには主幹事証券会社を選定し、証券会社に提出する上場申請書類の作成を開始します。
N-1期
「上場申請のための有価証券報告書」「上場申請のための報告書」など上場申請書類のドラフトを作成し、主幹事証券会社の審査を受けます。
申請期、上場
上場申請書類を完成させ、証券取引所に上場申請を行います。証券取引所による審査には、通常2、3ヶ月かかります。審査を経て上場承認がおりれば、晴れて株式上場(IPO)となります。
IPOに関わる専門家とその役割
IPOプロジェクトには、様々な専門家が関わり、それぞれが重要な役割を担います。
主な専門家とその役割は以下の通りです。
- 主幹事証券会社:上場前の必要書類の作成指導、社内体制の整備指導といった申請準備のサポートを行い、上場時には株式の引き受けや価格決定などを行います。IPOプロジェクトの中核的な存在といえるでしょう。
- 監査法人:ショートレビューを行い、IPOに必要な監査を実施します。財務諸表の信頼性を担保する重要な役割を果たします。
- 弁護士:上場企業にふさわしい内部規律の健全化などに欠かせない法的なサポートを行います。コンプライアンス体制の構築や契約書の整備なども担当します。
- IPOコンサルティング会社:IPOに関する豊富なノウハウを基に、企業を総合的に支援します。プロジェクト管理から戦略策定まで幅広くサポートします。
- 税理士:税務・会計の専門家として、IPO準備における財務体制の整備や税務リスクの洗い出しなどを担当します。
これらの専門家は単独で動くのではなく、相互に連携しながらIPOプロジェクトを成功に導きます。
IPO準備における税理士の役割
税理士が担う主な業務とサポート範囲
IPO準備において、税理士は以下のような重要な役割を担います。
財務諸表の整備支援
上場審査では、過去の財務諸表の信頼性が厳しくチェックされます。税理士は、会計基準に準拠した適切な財務諸表の作成をサポートし、監査法人による監査がスムーズに進むよう支援します。
税務リスクの洗い出し
過去の税務申告に誤りがないか、税務調査リスクはないかなど、税務面での潜在的なリスクを洗い出します。問題が発見された場合は、適切な対処方法を提案します。
税務コンプライアンス体制の構築
上場企業として求められる税務コンプライアンス体制の構築を支援し、税務処理の標準化や内部統制の整備などを行います。
ストックオプション・資本政策の税務アドバイス
ストックオプション制度の導入や資本政策の実行に際して、税務上の留意点をアドバイスします。適切な制度設計により、税務リスクを最小化します。
監査法人対応
監査法人による監査において、税務面での質問や指摘事項への対応をサポートします。監査を円滑に進めるための重要な役割を果たします。
税理士が関与することで得られる効果
税理士がIPO準備に関与することで、以下のような効果が期待できます。
- ミスの未然防止:税務・会計の専門家である税理士が関与することで、財務諸表の作成ミスや税務申告漏れなどを未然に防ぐことができます。監査や審査の段階で問題が発覚するリスクを大幅に軽減できます。
- 審査通過率の向上:適切な財務体制が整備されることで、証券取引所による審査をスムーズに通過できる可能性が高まります。審査で指摘される事項を事前に解決できるため、審査期間の短縮も期待できます。
- 社内体制の強化:税理士の指導により、上場企業として求められる財務・税務体制が整備されます。これにより、上場後の継続的な企業運営にも大きなメリットがあります。
税理士が担うIPO支援の役割とは?

髙谷 武司
記事監修者からのワンポイントアドバイス
IPOにおける税理士の強みは、適切な経理体制の構築支援や税務リスクへの対応が挙げられます。
例えば、顧問税理士がいる場合は、会社の経理の状況などに精通しています。そのため、上場企業に求められる会計基準(GAAP)に沿った経理処理や適切な内部統制などについて、監査法人と連携しながら、上場に向けた経理体制の構築支援を受けられます。
また、IPOで導入されることが多いストックオプションやグループ会社の整理に伴う組織再編は、税制適格の要件を満たすなど適切に実行しないと、想定外の税金が生じることがあります。このような税務リスクへの対応は他の専門家では難しく、税理士ならではの役割と言えるでしょう。
IPO支援を税理士に依頼するメリット・デメリット
税理士に依頼するメリット
税理士にIPO支援を依頼することで、以下のようなメリットが得られます。
専門的なアドバイス
税理士は税務・会計の専門家として、IPO準備における財務面での適切なアドバイスを提供できます。特に、証券取引所の審査で重視される「会社の財務や収益性」について、的確な指導を受けることができます。
スケジュール管理
IPOは複雑なプロジェクトで、多くの作業を決められたスケジュールで進める必要があります。経験豊富な税理士は、効率的なスケジュール管理をサポートし、プロジェクトの遅延リスクを軽減します。
ワンストップ対応
IPO支援に実績のある税理士事務所では、申請書類の作成代行、内部管理体制の構築、事業計画策定などを、必要に応じて他の士業と連携しながらワンストップで提供します。
他士業との連携
税理士は、弁護士、公認会計士、証券会社など、IPOに関わる他の専門家とのネットワークを持っています。これにより、プロジェクト全体の調整役として機能し、円滑なIPO準備を支援します。
継続的なサポート
IPO準備期間中だけでなく、上場後の継続的なサポートも受けることができます。上場企業として求められる税務・会計業務を継続的に支援してもらえます。
税理士に依頼するデメリット
一方で、税理士に依頼することのデメリットも理解しておく必要があります。
追加コスト
IPOには、証券会社へのコンサルティング報酬、監査法人への監査報酬をはじめ多くの費用がかかります。税理士にサポートを依頼すれば、それに上乗せしてコストが発生します。ただし、適切なサポートによりプロジェクトが円滑に進むことで、結果的にコスト削減につながる場合もあります。
IPO経験の差によるサービス品質の違い
すべての税理士がIPOに詳しいわけではありません。IPO経験の少ない税理士に依頼した場合、期待したサポートを受けられない可能性があります。依頼する際は、IPOに実績を持つ税理士かどうか、きちんとチェックすることが重要です。
情報の機密性
IPO準備には機密性の高い情報が含まれるため、税理士との守秘義務契約を適切に結び、情報管理体制を確認することが必要です。
税理士なしでIPO準備を進めると起こる失敗例

髙谷 武司
記事監修者からのワンポイントアドバイス
IPO準備でありがちな失敗として、会計基準(GAAP)に適合できないケースが挙げられます。例えば、事業拡大に伴い子会社が増加すると、連結会計の導入やグループ通算制度の検討など、経理が途端に複雑となります。この場合、社内人材だけで対応するのは難しいことも多くなります。そこで、信頼できる税理士がいれば、適切な会計処理や税務リスクへの対応を行ってくれるでしょう。
また、創業者の相続税対策も重要になります。上場後は、保有している株式の価値が大きく増加します。そのため、資本政策を考える段階から検討するのが良いでしょう。なお、相続税は専門性が高いため、相続税に強い税理士に依頼することも検討してみてください。
IPO支援に強い税理士の選び方
選定時にチェックすべきポイント
IPO支援を依頼する税理士を選ぶ際は、以下のポイントを重視して検討することが重要です。
IPO支援実績・経験
最も重要な要素は、IPO支援の実績と経験です。過去にどのような企業のIPOをサポートしたか、どの程度の規模や業種での経験があるかを確認しましょう。成功事例だけでなく、どのような困難を克服したかも重要な判断材料となります。
サービス内容の充実度
税理士によって提供するサービス内容は異なります。以下のようなサービスを包括的に提供できるかを確認しましょう。
- 財務諸表の整備支援
- 税務リスクの洗い出し
- 内部統制の構築支援
- 申請書類の作成代行
- 監査法人対応支援
他士業との連携力
IPOは税理士だけでは完結しません。弁護士、公認会計士、証券会社などとの連携が不可欠です。これらの専門家との強固なネットワークを持ち、プロジェクト全体をコーディネートできる税理士を選ぶことが重要です。
費用体系の透明性
IPO支援にかかる費用は高額になる場合が多いため、費用体系が明確で透明性の高い税理士を選ぶことが大切です。追加費用の発生条件や支払いスケジュールについても、事前に詳しく確認しましょう。
コミュニケーション能力
IPOプロジェクトは長期間にわたるため、税理士との密接なコミュニケーションが必要です。定期的な進捗報告や相談への対応など、コミュニケーション能力の高い税理士を選ぶことが重要です。
税理士を探す方法・相談先
IPO支援に強い税理士を探すには、以下のような方法があります。
税理士紹介サービスの活用
当サービス(税理士紹介センタービスカス)のような専門の税理士紹介サービスを利用することで、IPO支援の実績を持つ税理士を効率的に見つけることができます。専任のコーディネーターが、企業の状況やニーズに応じて最適な税理士を選定・紹介してくれます。
IPOコンサルティング会社からの紹介
IPOコンサルティング会社は、IPO支援に実績のある税理士とのネットワークを持っています。コンサルティング会社経由で紹介を受けることで、信頼性の高い税理士を見つけることができます。
監査法人からの紹介
監査法人は、IPO支援の経験豊富な税理士との連携実績があります。監査法人に相談することで、適切な税理士を紹介してもらえる可能性があります。
証券会社からの紹介
主幹事証券会社も、IPO支援に実績のある税理士とのネットワークを持っています。証券会社との関係性を重視する場合は、証券会社からの紹介を検討するのも良いでしょう。
IPO後も税理士がサポートできること
上場後の税務・会計サポート
IPOが完了しても、上場企業として継続的に税理士のサポートが必要です。
上場後の税務申告
より厳格な税務申告が求められます。税理士は、上場企業の特殊な税務処理に対応し、適切な申告書を作成します。
税務調査対応
上場企業は税務調査の対象となりやすく、調査時には専門的な対応が必要です。税理士は、税務調査の立会いや資料準備など、総合的なサポートを提供します。
コンプライアンス維持
上場企業として求められる税務コンプライアンス体制の維持・向上をサポートします。税制改正への対応や内部統制の見直しなども含まれます。
財務報告の品質向上
四半期決算や年次決算において、投資家向けの高品質な財務報告を作成するためのサポートを提供します。
資本政策・株主対応などの継続支援
上場後も、税理士は以下のような継続的な支援を提供できます。
資本政策の見直し
事業成長に応じた資本政策の見直しや、M&A戦略の税務面での検討をサポートします。
株主向け対応
株主総会の運営支援や株主向け資料の作成など、株主対応における税務面でのサポートを提供します。
税制改正への対応
税制改正が企業に与える影響を分析し、適切な対応策を提案します。具体的には、法人税率の変更、研究開発税制の見直し、国際税制の改正(BEPS対応)、デジタル課税制度の導入などに対する対応策を検討し、企業の税負担を最適化します。
グループ会社の税務管理
上場後の企業拡大に伴い、子会社や関連会社の税務管理が複雑化します。税理士は、グループ全体の税務戦略を策定し、連結納税制度の活用、移転価格税制への対応、グループ内取引の適正化などをサポートします。
M&A時の税務サポート
上場企業は成長戦略としてM&Aを検討する機会が増えます。税理士は、M&A取引における税務デューデリジェンス、買収ストラクチャーの税務最適化、統合後の税務処理、のれんの税務処理などを専門的にサポートします。
まとめ
IPOは企業にとって大きな転換点であり、成功のためには専門家の適切なサポートが不可欠です。特に税理士は、財務・会計・税務の専門家として、IPO準備から上場後の継続的なサポートまで、幅広い場面で重要な役割を果たします。
IPO支援に強い税理士を選ぶ際は、実績や経験、サービス内容、他士業との連携力などを総合的に判断することが重要です。また、税理士紹介サービスを活用することで、自社のニーズに最適な税理士を効率的に見つけることができます。
IPOを成功させ、上場後も継続的な成長を実現するために、早期の段階から税理士との連携を検討することをお勧めします。適切な税理士のサポートにより、IPOプロジェクトを円滑に進め、企業価値の最大化を図りましょう。
税理士紹介センターでは、IPO支援に豊富な実績を持つ税理士を無料でご紹介しています。専任のコーディネーターが、お客様の状況やご要望をお伺いして、最適な税理士を厳選いたします。IPOをお考えの際は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
よくある質問
Q: IPO支援を税理士に依頼するタイミングはいつが良いですか?
A: IPO準備は最低3年間必要とされているため、IPOを検討し始めた早期の段階(N-3期以前)で税理士に相談することをお勧めします。早期から関与することで、より効果的な準備が可能になります。
Q: IPO支援にかかる税理士費用の相場はどのくらいですか?
A: 企業規模や支援内容によって大きく異なりますが、数百万円から数千万円の範囲が一般的です。費用対効果を考慮し、複数の税理士事務所から見積もりを取って比較検討することが重要です。
Q: 現在の顧問税理士がIPO経験がない場合、どうすべきですか?
A: IPO経験の豊富な税理士への変更、またはIPO専門の税理士との併用を検討することをお勧めします。現在の顧問税理士との関係性を重視する場合は、IPO専門税理士からの指導を受けながら進める方法もあります。
Q: 税理士紹介サービスを利用する際の注意点はありますか?
A: 税理士紹介センターのような信頼性の高いサービスを利用し、IPO支援実績のある税理士を確実に紹介してもらうことが重要です。また、紹介後も継続的なサポートを受けられるサービスを選ぶと安心です。
Q: IPO支援税理士に依頼する際の契約期間は?
A: 通常、IPO準備期間全体(3年程度)をカバーする長期契約となります。ただし、年次更新型の契約も可能で、各段階での成果を確認しながら進めることができます。上場後の継続サポートも含めた契約にするか、別途契約にするかは事前に確認しておきましょう。
Q: IPO準備と通常の税務顧問の違いは?
A: IPO準備は、通常の税務顧問業務に加えて、上場審査対応、内部統制構築、監査法人対応、申請書類作成支援などの専門的な業務が含まれます。また、プロジェクト管理的な側面が強く、他の専門家との連携も重要になります。費用も通常の顧問料とは別途発生することが一般的です。

- この記事の監修者
- 髙谷公認会計士・税理士事務所
代表 髙谷 武司(税理士・公認会計士)
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