非居住者又は外国法人に支払う所得の源泉徴収事務 Ⅳ源泉徴収の対象となる国内源泉所得の取扱い9 | 紹介実績NO.1のビスカス 税理士紹介センター

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源泉所得税関係情報

非居住者又は外国法人に支払う所得の源泉徴収事務

Ⅳ源泉徴収の対象となる国内源泉所得の取扱い9

9 給与等の人的役務提供の報酬等(八号所得)
国内法では、給与等の人的役務の提供に対する報酬等については、原則として、国内において役務の提供が行われたものを国内源泉所得として源泉徴収を要することとされています。
これに対し租税条約では、人的役務の提供による報酬等を、給料等の雇用契約に基づくものと、自由職業者等の事業所得に該当するものとに分類して規定し、給与等については短期滞在者を源泉地国免税、自由職業者については芸能人等に該当する者を除き恒久的施設がなければ源泉地国免税としているのが一般的です。
なお、この所得は、非居住者が自己の役務の提供に基づき取得するものであり、他人の役務を提供することを目的とした人的役務の提供事業の対価(二号所得)とはその内容を異にしています。

国内法による取扱い
租税条約による取扱い

1 給与、報酬等の範囲
次に掲げる個人の人的役務の提供の対価は、国内源泉所得に該当し(所法161八)、源泉徴収が必要です。
①俸給、給料、賃金、歳費、賞与又はこれらの性質を有する給与のうち、国内において行う勤務に基因するもの
②人的役務の提供に対する報酬のうち、国内において行う人的役務の提供に基因するもの
③退職手当等のうち、受給者が居住者であった期間に行った勤務その他の人的役務の提供に基因するもの
④公的年金等(外国の法令等に基づく年金等を除きます。)

1 概要
租税条約では、人的役務の提供の対価等を雇用契約等に基づく役務提供に係るものと、雇用契約等に基づかない自由職業者の役務提供に係るものとに区分して規定しています。

2 給与所得(雇用契約等に基づく役務提供に対するもの)に対する課税
(1)原則的取扱い
給与等については、原則として、その勤務(役務提供)が日本国内で行われた場合に、我が国において課税することとされています。したがって、国外における勤務等に対する給与等については、我が国においては課税されないこととなります。
また、その勤務が国内及び国外の双方にわたって行われた場合には、その給与等の総額のうち、国内において行った勤務に対応する部分の金額が課税対象となり、原則として、次の算式により計算することになります(所基通161−28)

【算式】
(給与等の総額)×(国内において行った勤務の期間)/(給与等の計算の基礎となった期間)

(2)役員に対する特例
イ 法人の所在地国での課税
役員は、非常勤役員として取締役会に出席するのみで日常の業務に直接関与しない場合、あるいは単に役員に名前を連ねているのみの場合も少なくないほか、合弁企業や親子会社間を往来するなど、実際の役務提供の場所の判定が困難なケースが少なくありません。また、役員としての役務については、企業経営という職務の性質からみて、その所得の源泉地を実際の役務提供地国に限定することは妥当でないとも考えられます。このようなことから、役員に対する報酬については、次のロを除いて、法人の所在地国において課税することとしています(所法161八イ)。
ロ  内国法人の使用人として常時国外勤務を行う場合
内国法人の役員としての勤務で、国外において行うものであっても内国法人の使用人(海外にある支店などの長)として常時勤務するような場合に受ける役員報酬については、一般の使用人が勤務した場合と同様に国内源泉所得としないことになっています(所令285①一かっこ書き、所基通161−29)。
また、内国法人の役員が国外にある法人の子会社に常時勤務する場合において、次に掲げるいずれの要件も備えているときの役員報酬についても、国内源泉所得とされないことになっています(所基通161−30)。
①その子会社の設置が現地の特殊事情に基づくものであって、その子会社の実態が内国法人の支店、出張所と異ならないものであること。
②その役員の子会社における勤務が内国法人の命令に基づくものであって、その内国法人の使用人としての勤務であると認められること。

(3)外国政府等に勤務する職員の給与の非課税
外国政府、外国の地方公共団体に勤務する人が日本国内における勤務により受ける給与(その外国がその国において勤務する日本国の国家公務員又は地方公務員の給与について所得税に相当する税を課さないこととしている場合に限ります。)については、課税しないことになっています(所法9①八、所令24、所規3)。
(注)1  外国政府等に該当しない法人から受ける給与は、たとえその法人が外国政府等の全額出資による法人であっても、非課税となりません(所基通9−12⑴)。
2  その勤務が外国政府又は外国の地方公共団体のために行われるものであっても、例えば、その外国政府又は外国の地方公共団体が舞踊、サーカス、オペラ等の芸能の
提供を行っている場合のように、その業務が我が国若しくは我が国の地方公共団体の行う業務以外の業務又は収益を目的とする業務である場合には、その業務に従事したことにより受ける給与は非課税とはなりません(所基通9−12⑶)。

2  給与所得(雇用契約等に基づく役務提供に対するもの)に対する課税
(1)原則的取扱い
給与等については、国内法と同様 に、原則として、役務提供が行われた国で課税することとされていますが、租税条約では、人的交流の促進等の観点から、短期滞在者や交換教授、留学生、事業修習者等について、一定の条件の下に源泉地国免税とするなどの特例を設けています(240ページ⑶以降を参照してください)。
なお、これらの特例に該当しない場合には、その給与、報酬について国内法に基づき、20%の税率により源泉徴収をすることになります。


(2)役員に対する特例
我が国が締結した租税条約でも、 国内法と同様に、役員については、その役務提供地ではなく法人の居住地(所在地)国で課税できる旨を規定しているのが一般的です。

(3)短期滞在者の免税
海外支店への出張などによる短期滞在者について、滞在地国で課税が行われると、滞在地国と居住地国との間に二重課税の問題が発生し、煩雑な納税や還付手続が必要となります。
そこで、租税条約では一定の短期滞在者に関する免税規定を設け、人的役務の提供地である源泉地国での課税を免除することとしています。
我が国の締結した租税条約も、これを規定しており、多くは次の3つを要件としてこれを認めることとしています。
①滞在期間が課税年度又は継続する12か月を通じて合計183日を超えないこと。
②報酬を支払う雇用者は、勤務が行われた締約国の居住者でないこと。
③給与等の報酬が、役務提供地にある支店その他の恒久的施設によって負担(課税所得の計算上損金に算入)されないこと。

(4)教授等の免税
我が国の締結した租税条約の多くは、大学その他の教育機関(学校教育法第1条に規定する学校に限ります。)において教育又は研究を行うために来日した教授等が取得する人的役務の提供による報酬について、2年間を限度として免税とする旨を規定しています。
なお、租税条約によっては、教育を行う機関を高等教育機関に限定したり、政府あるいは教育機関の招へいを要件としているもの、教育若しくは研究が公的な利益を目的とするものでなければならない旨を規定しているものもあります。

(5)学生、事業修習者等の免税
学生(学校教育法第1条に規定する学校の児童、生徒又は学生に限ります。)、事業修習者等が取得する報酬については、欧米諸国などとの条約では、生計、教育、勉学、研究又は訓練のために受け取る給付で国外から支払われるもの、すなわち海外からの送金について課税を免除するにとどまっています。
これに対して、アジア諸国などとの条約では、上記の海外からの送金のほか、政府又は宗教若しくは慈善、学術等の団体からの交付金、手当又は奨励金、雇用主などから支払われる給与等の報酬及び滞在地国における人的役務の提供の対価等(アルバイト収入)をも含めて免税としているものもあります。
事業修習者とは、職業上又は事業上の知識又は技能をほとんど有しない見習者をいいますが、アジア諸国などとの租税条約には、これに加えて、ある程度の技能を有する者で、他企業から技術上又は職業上の経験を習得するために相手国を訪れる事業習得者についても、相手国で行う人的役務の提供に対する課税を一定の制限のもとに免税としているものもあります。

(6)政府職員の報酬の免税
イ 租税条約による免税
我が国が締結した租税条約は、国内法の規定に従って、政府職員の取得する報酬について職員派遣国の課税権を確認し、接受国では、課税を免除する旨を規定しています。
ロ 国際条約による免税
一定の国際機関に勤務する者の給与について租税条約以外の国際条約(協定)において課税上の特例(非課税)を定めているものがあり、その主なものは次のとおりです。
①日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定
②国際連合の特権及び免除に関する条約
③専門機関の特権及び免除に関する条約
④外交関係に関するウィーン条約
⑤各国との間の領事条約

3  自由職業者等の報酬(給与所得以外のもの)に対する課税
(1)人的役務の提供に対する報酬の範囲
「人的役務の提供に対する報酬」とは、非居住者が自己の活動により、他人のために労務等を提供することにより支払を受ける報酬のうち給与等に該当するもの以外のものをいいますから、主として次に掲げるような租税条約でいう自由職業者等が受ける報酬がこれに該当することになります(所法161八イ)。
(イ)弁護士、公認会計士等
(ロ)映画・演劇の俳優、音楽家その他の芸能人
(ハ)職業野球の選手、プロサッカーの選手、プロボクサー、プロレスラーその他の職業運動家

(2)国内源泉所得の範囲
自由職業者等に支払う人的役務の提供に対する報酬については、国内において行う人的役務の提供に基因する部分が国内源泉所得に該当し、この部分のみが課税対象となります(所法161八イ)。
したがって、国外において自由職業者等による人的役務の提供を受けた場合の対価は、我が国において課税されないことになります。
なお、人的役務の提供が国内及び国外の双方にわたって行われた場合の国内源泉所得の計算は、課税上弊害がある場合を除き、給与等の場合と同様です。

(3)源泉徴収を要しないもの
映画若しくは演劇の俳優、音楽家その他の芸能人又は職業運動家の役務提供の対価のうち不特定多数の者から支払われるものについては、源泉徴収の必要はありません(所法212①、所令328一)。

3  自由職業者等の報酬(給与所得以外のもの)に対する課税
多くの租税条約では、医師や弁護士など「自由職業者」を特掲し、その所得について、事業所得に準じた取扱いをしています。
自由職業者に関する規定がない場合には、その報酬等については、一般的に、事業所得として取り扱われます。

(1)原則的取扱い
我が国が締結している租税条約の多くは、自由職業者の所得については、事業所得に準じて「固定的施設がなければ課税せず」の原則が規定されており、国内に自己の活動を遂行するために通常使用することができる固定的施設を有しない場合には、自由職業者の人的役務の提供に対する報酬について課税は行われません。
また、固定的施設を有する場合には、その固定的施設に帰属する部分のみが課税の対象となります。


(2)芸能人等に対する特例
演劇、映画、ラジオ又はテレビジョンの俳優、音楽家その他の芸能人及び運動家に対しては、滞在期間の長短又は活動状況に関係なく、役務提供地国においても課税できることが、租税条約における確立された慣行となっています。ただし、例外的に芸能人等に対して一部免税を認めている租税条約もあります。

4 退職手当等に対する課税
(1)国内源泉所得の範囲
非居住者に支払う退職手当等については、居住者であった期間に行った勤務(内国法人の役員として非居住者であった期間や内国法人等が運行する船舶等において勤務した期間を含みます。)に対応する部分が国内源泉所得に該当し、この部分のみが源泉徴収の対象ととなります(所法161八ハ、所基通161−28(注)2)。したがって、その退職手当等が居住者としての勤務期間とそれ以外の勤務期間とを合算した期間に対して支払われる場合には、次の算式による勤務期間あん分により国内源泉所得に該当する退職手当等の額を計算することとなります。


【算 式】
(退職手当等の額)×(居住者としての勤務期間)/(退職手当等の計算の基礎となった期間)


(2)退職所得についての選択課税
非居住者が支払を受ける退職手当等については、その支払の際に源泉徴収が行われますが、受給者本人の選択により、退職に基づいてその年中に支払われる退職手当等の総額を居住者が受けたものとみなして、居住者と同様の課税を受けることもできます(所法171)。これは「退職所得についての選択課税」といわれる制度で、長年、国内で勤務した人が海外支店への転勤などにより非居住者となったまま退職した場合に、国内勤務のまま退職した者と比較して税負担が高額となることのないよう、その調整を図るために設けられた制度です。
この場合、退職手当等の受給者である非居住者は、源泉徴収された税額の精算のために退職手当等の支払を受けた翌年1月1日(その日までに、その年中の退職所得の総額が確定したときは、その確定した日)以後に、税務署長に対し所得税の確定申告書を提出することにより、既に源泉徴収れた税額の一部又は全部について還付を受けることができます(所法173)。

4 退職手当等に対する課税
(1)租税条約の適用条項
我が国が締結した租税条約には、退職手当等に関する規定を設けたものはなく、給与所得に関する規定(退職手当等の支払を受ける者が法人の役員である場合には、役員報酬に関する規定)が適用されます。
なお、我が国の締結した租税条約の多くは、「退職年金」の条項を規定していますが、退職手当等について、この条項の適用はありません。

(2)役員退職金の取扱い
役員に対する退職手当等については、役員報酬に関する規定が適用されます。
したがって、多くの場合、役員に対する退職手当等を支払う法人の所在地国において課税できることとなります。

5 公的年金等に対する課税
国内法においては、非居住者に対し支払う公的年金等(外国の法令に基づくものを除きます。)については、居住者であった期間に行った勤務に基因するものに限らず、すべて課税されます(所法161八ロ、所令285②)。

5 退職年金等に対する課税
(1)原則的取扱い
我が国の締結した租税条約は、ほとんどが退職年金条項を有し、居住地国のみで課税できることとされています。

(2)政府職員の退職年金に対する課税
政府職員としての過去の勤務に基づき支払われる退職年金については、一般の退職年金の取扱いと異なり、その政府職員が条約相手国に居住しており、かつ、その居住地国の国民等である場合を除き、その退職年金の支払国において課税できることとされています。
※2010年1月現在での情報を元に制作しております。最新または正確な情報をお求めの方は、専門家にお問い合わせください。
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