事業承継に困ったらノウハウを持つ税理士に相談を!
事業承継のポイントや税理士選びの注意点を解説

事業承継に困ったらノウハウを持つ税理士に相談を!  事業承継のポイントや税理士選びの注意点を解説
公開日:
2019/05/27
最終更新日:
2022/08/04
 
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会社を継ぐことになっている息子も、仕事が板についてきた。これならば、自分がいつリタイアしても大丈夫――。
ところが、後継者への事業の受け渡し=「事業承継」は、そう簡単にはいかないのをご存知でしょうか。知らずに準備を怠っていると、大きな問題を招きかねない“社業のバトンタッチ”について考えます。

事業承継の流れ、ポイントは?

経営者の仕事は、自らの事業を発展させること。それは、みんなが了解しています。でも、社長にはもう1つ、その事業を引き継ぐ人間を育て、自分が退いた後もしっかり事業を継続させていくという大事な、そして決して容易とは言えない任務があるのです。その「事業承継」を成功させるためには、事業を成長させるのとは違う知識やノウハウも必要になるのです。

事業承継の流れ

まずは、事業承継の流れを見ていきましょう。
事業承継は、大まかには以下のような流れで行われます。

1.現状を分析する

会社の現状を分析し、資産・財産の状況をまとめます。また、後継者や相続人の調査も行います。

2.問題の洗い出しと対策

現状を分析した際に見つかった問題を洗い出し、対策を行います。

3.事業承継の実行

問題への対策を行ったら、事業承継を実行します。

事業承継のより詳細な流れは、以下の記事をご参照ください。

事業承継の種類

次に、事業承継の種類について見ていきましょう。
大まかに「親族への承継(親族内承継)」と「親族以外への承継(親族外承継)」、そして「M&Aを活用した承継」に分けられます。

親族内承継 親族外承継 M&Aを活用した承継
内容 自分の子や兄弟を
経営者にする
会社の従業員などを
経営者にする
第三者に事業を売却し、
経営を引き継いでもらう
メリット
  • 気心の知れた相手を、時間をかけて教育することができる
  • 従業員や取引先から受け入れられやすい
  • 事業承継税制を活用して、相続税などが課税されない形で、後継者に自社株を譲ることができる
  • 多くの対象者から経営者に適した人材を選ぶことができる
  • 事業に精通した人間に任せられる
  • 経営方針などが大きく変わらない
  • 事業の承継相手を幅広く探すことができる
  • 雇用関係や残債も引き継いでもらえる可能性がある
  • 現経営者は、老後資金などとしてまとまったお金を手にすることができる
デメリット
  • 親族に経営者としての適性を持つ人間がいるとは限らない
  • 1人の子どもに自社株を贈与・相続する場合、他の相続人との間に財産分与の不均衡が生じる可能性がある
  • 他の従業員が納得する人選をしないと、社内不和が生じたり、権力争いが起こったりする可能性がある
  • 後継者が自社株を譲り受ける際に、大きな経済的負担の生じる場合がある
  • 希望する条件に合う買収相手を見つけるのは簡単ではなく、コストもかかる
  • 従業員の雇用が守られない可能性がある
  • 社風や経営方針が変わり、従業員や取引先が離反する可能性がある

親族への承継(親族内承継)

経営者の親族、例えば、経営者の子供や兄弟に事業承継をするパターンです。
メリットとしては、親族内承継やM&Aに比べて、事業承継のための準備期間を比較的長めに設けられることです。親族内承継では、早めに承継の準備に取り掛かることと、準備期間中にしっかりと後継者教育をすることが成功のポイントです。
また、後継者本人によほどの問題が無い限りは、役員や従業員、取引先から後継者として受け入れられやすいという長所もあります。逆に、親族内に適切な後継者候補がいない場合は、親族外承継やM&Aを検討すべきでしょう。

親族以外への承継(親族外承継)

経営者の親族以外の人、例えば社内の役員や従業員に事業承継するパターンです。
社内の役員や従業員が後継者となる場合、あらかじめ事業内容や経営理念を詳しく知っているため、事業承継後も経営に一貫性を持たせやすいというメリットがあります。
注意点としては、これは親族外承継に限らない話ではありますが、選んだ後継者によっては社内不和が生じてしまったり、他の役員や従業員が離脱してしまうこともあります。

M&Aを活用した承継

M&Aとは、Mergers&Acquisitionの略称で、和訳すると「合併と買収」となります。企業の経営権の譲渡や事業の一部譲渡など、様々な手法があります。
親族内承継・親族外承継が難しいと判断された場合に、M&Aが選択されることが多いです。

M&Aの詳細については以下の記事をご参照ください。

事業承継のポイントは、自社株の引き継ぎ

社屋や、製造業ならば生産設備、社員(の雇用、仕事)、取引先、債権・債務といった諸々を新しいトップに受け継がせる事業承継ですが、中でもポイントになるのは、自社株の引き継ぎです。安定した経営を確保するためには、自ら一定数以上の自社株を持っている必要があります。「社長」という肩書がついていても、他に50%以上の株式を持っている人や会社があったら、株主総会で解任されてしまうかもしれません。逆に3分の2以上を確保していれば、総会で定款の変更や事業の譲渡、会社の合併、解散といった重要事項を決議することができます。
中小企業の経営に携わる人間は、最終判断を自ら下せる、この水準の株を持つのが理想です。

事前の対策が重要

しかし、だからといって、現社長が後継者に勝手に株を渡すことはできません。未上場企業の株式にも、株価があります。市場で売買される上場企業の株と違い、いくつかのルールに従って算定されるのですが、基本的に事業が拡大して業績のいい会社には、高い株価がつきます。原則として、受け取るぶんに課せられる贈与税や相続税を負担しなければ、後継者がその株を手にすることはできないのです。新しい「事業承継税制」を使えば、税の支払いは猶予されるのですが、それについては後述します。

特に問題になるのは、多くの自社株を持っていた経営者が亡くなり、相続になった場合です。自社株も相続財産。高額の評価をされた株式を、後継者がまとめて相続することができず、結果的に親族が分散して持つかたちになる可能性があるわけです。株を分け合っているのが親や兄弟だからといって先々まで安心できないのは、大塚家具の「内紛」などを見ても明らかでしょう。ですから、確実に後継者に株を持ってもらうための対策が必要になるのです。

誰でも対策ができるわけではない事業承継

そこで頼りにしたいのが、税金のプロである税理士。ただし、すべての税理士が事業承継に詳しいわけではないことに、注意が必要です。

事業承継における税理士の業務範囲とは

そもそも、事業承継において、税理士はどのような関わり方をするのでしょうか。
税理士はその名称の通り「税金の専門家」ですので、事業承継でも税金に関わることを中心に業務を行います。

具体的には、

  • 自社株の評価、株価対策
  • 相続税や贈与税のシミュレーションと、それに伴う事業承継方法のアドバイス
  • 相続税や贈与税の計算と申告書の作成

が主な業務範囲です。
相続人の調査(戸籍の確認)や、遺言書の作成、相続登記などについては、税理士ではなく、司法書士や弁護士の業務範囲となります。

事業承継における税理士の役割については、以下の記事もご参照ください。

相続税・資産税の知識もあるかを確認しよう

会社の顧問になっている税理士ならば、税務・会計をはじめ、法人経営に関する課題解決には、ある程度の自信があるはず。でも、事業承継には、さきほどもお話ししたように、社長個人の相続が絡んできますから、その分野の知識だけでは、対処することができないのです。正しいアドバイスのためには、法人税などに加えて、相続税や資産税関連の蓄積も不可欠。そもそも相続税に明るい専門家の数は限られていますから、これはけっこう高いハードルと言わざるを得ません。

先延ばしせず、早め早めの行動を

事業承継も、長い時間をかけてやる方が、対策の選択肢は広がります。例えば、1年に110万円以下ならば税金はかからないという贈与税の基礎控除を利用して、毎年少しずつ後継者に株を渡していけば、無税ないしは低額の贈与税で、移動させることができるでしょう。
事業承継に強い税理士ならば、将来の相続を見据えて、早い段階からそうした対策を提案してくれるかもしれません。でも、そんな助言もないまま、「タイムリミット」の近づいているケースが、世の中には少なくないのです。「事業承継は不安だが、何をしていいのかわからない」と感じたら、専門の税理士や会計事務所に相談してみることをお勧めします。

税理士に求められるスキルは?

事業承継を依頼する税理士に求められるのは、税務、関連法規、事業承継のスキームといった知識だけではありません。説明してきたような様々な困難点も踏まえながら、個々のケースにふさわしい具体的な方策を立案し、先頭に立って実行する「提案力」「行動力」が求められます。事業承継の関係者が、現経営者、後継者候補、取引先、従業員など多岐に渡るという点からは、「調整力」「交渉力」も問われるでしょう。
また、特に重要なのは、他の士業(弁護士、司法書士、社会保険労務士等)などの専門家と連携してプロジェクトを遂行する思考、体制を備えていることです。事業承継は、税務だけでなく法務、労務なども交えた総合的な取り組みが不可欠(言い方を変えると、税理士単独では難しい)からです。

新「事業承継税制」をフォローできる税理士か?

ところで、2018年度の税制改正で「事業承継税制」の見直しが行われました。ひとことで言うと、一定の要件を満たせば、後継者に自社株を渡す際の贈与税、相続税が100%猶予されることになったのです。これにより、「後継者への自社株の移動の障害はなくなった」という見方も広がっていますが、必ずしもそうではありません。

多くの注意点もあり

注意が必要なのは、例えば、認められるのはあくまでも税の支払いの「猶予」であって「免除」ではない、という事実です。税の申告期限から5年以内に「後継者が会社の代表でなくなる」とか、基本的に次の事業承継までの間に「事業年度の総収入額がゼロになる」「資本金・資本準備金を減少した」といった「取消事由」に抵触した場合には、猶予されていた税金に利子税を付けて、納めなくてはなりません。資本構成を変えることは許されませんから、なんの気なしに増資したりしただけで、アウトです。

短期的ではなく長期的な視点で税理士を選ぶ

新たな税制が、事業承継に悩む経営者にとって朗報なのは、確かでしょう。ただし、実際にそれを使う場合にも、今述べたようなリスクまできちんと説明し、適用を受けた後も問題が起こらないように、長期間フォローしてくれる専門家の援助を受けるのがベスト。どの税理士がそうした事業承継のノウハウを持つのかわからない時には、実績ある税理士紹介会社のネットワークを活用するのも、有効だと思います。

事業承継で税理士をお探しの方へ

事業承継を失敗しないために、その分野に知識と経験を持つ専門家のアドバイスを受けてみてはいかがでしょう。対策は早く始めるほど選択肢が広がりますから、不安に感じる点があったら、すぐに相談を。

この記事の執筆者
税理士紹介センタービスカス編集部
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