税理士選びの基準にはいろいろな“モノサシ”がありますが、「先生の年齢」を気にする方もいるでしょう。例えば、起業したての20代の経営者が、自分の父親よりも年上の税理士を顧問に頼んでも、気軽に相談はしにくいかもしれません。でも、若い先生はいざという時に果たして力になってくれるのか?
今回は、若手税理士を選ぶメリット・デメリットについて考えます。
目 次
高齢化が進む税理士業界
一般的に「若手」というと大体20代~30代前半を指しますが、税理士業界の場合は少し特殊です。まずは税理士の年齢層別の割合を見ていきましょう。
20代~40代の税理士は28%
そもそも、「若手税理士」はどれくらいいるのでしょうか?
日本税理士会連合会の調査(2014年1月1日現在、下記グラフ参照)によれば、およそ7万5000人の税理士のうち、40代以下の税理士の割合は28%にとどまっています。
年代別には60歳代が最も多い30%、70代80代も10%以上を占めています。一般企業と比べると、驚くほど高齢化の進んだ業界だということになります。
この結果から、税理士業界にとっての若手とは、20代と30代だけでなく、40代も含まれると考えて良いでしょう。それでも、業界全体に占める割合を考慮すると、若手税理士は希少な存在であると言えます。
50代以上の税理士が多い原因とは?
こうなる原因の1つは、税理士試験が5科目の積み上げ方式のため、何年もかけて資格を取る人が多い、すなわち税理士になる年齢自体がそもそも高いこと。加えて、税務署を退職してから税理士として仕事をする人(税務署上がり、税務署OB、国税OB)も一定数いるという、この世界独特の「人材移動」も影響しているようです。
また、今までに書いてきた「税理士」は「開業税理士」を指しています。資格取得後も所属税理士・社員税理士として経験を積んだのち、開業税理士として登録をし直してから独立、というケースが多いため、上記の資格取得までのステップも含めると、税理士の年齢層はどうしても高くなってしまうのです。
- 開業税理士
自分で税理士事務所を開き、所長として税理士業務を行います。 - 社員税理士
税理士法人を構成する役員である税理士です(税理士法人は税理士が2人以上いないと作ることができません)。 - 所属税理士
税理士事務所や税理士法人に雇用され、税理士業務を行う税理士です。かつては補助税理士と呼ばれていました。
とはいえ、高齢の税理士には、実際にはすでに第一線を退いている人も少なくありませんから、さきほどの年齢比率については、割り引いて考える必要もあるでしょう。
若手税理士に依頼するメリット
実は、どこまでが「若手」なのかというのも、線引きは単純ではありません。依頼する人自身の年齢によっても、見方は違ってくる可能性もあるからです。
ここでは、一応40歳ぐらいまでの税理士に会社の顧問を依頼する、というシチュエーションをイメージして、話を進めます。この場合、どのようなメリットがあるのでしょうか?
比較的顧問料が安い
とにかくお客さまを獲得したいというマインドが強く、料金設定は割安な場合が多いでしょう。
気力にあふれ、熱心に対応してくれる
やはり「若さ」は力です。今も述べたように、顧客の信頼を勝ち取って仕事を広げたいという気持ちが強いですから、1つひとつの事案に一生懸命対応してくれる税理士が多いです。体力もありますから、フットワークも軽いはずです。
仕事がマンネリ化していない
経験を重ねれば、良くも悪くも色々なことがわかってきます。それは強みでもありますが、えてして「ルーティンの業務をこなす」というドライな姿勢になりがち。見るものすべてが新鮮な若手の先生ならば、自らも勉強するつもりで親身に関わってくれるでしょう。
勉強の意欲が強い
知らないことをそのままにしていては、業界で生き残っていくことはできません。毎年変わる税制の動向など、情報収集の意欲も強いと思われます。
先生自らが対応してくれる
ベテランの税理士が会計事務所の所長として多くの所員をまとめているような場合、直接の担当はその先生ではなく、事務員に任せることが多いです。聞きたいことがあっても、すぐに専門的な回答が得られないこともあります。
若い先生が個人や小規模事務所の看板を掲げている場合には、その税理士に直接担当してもらえるというメリットがあります。
ITをはじめとするテクノロジーに強い
電子申告やクラウド会計の普及など、会計、経理の現場が本格的なIT化に向けて大きく動き出している今、このことが持つ意味は非常に大きなものになっています。子どもの頃からITに慣れ親しんでいる若手税理士には、こうした技術革新への対応力という点で、一日の長があると言えるでしょう。
IT業界などの新業態と親和性がある
同じ理由で、ITや多種多様なサービス業など「従来なかった業界・業態」の仕事にも、抵抗感なく対応できるのも強みです。
若手税理士に依頼するデメリット
半面、デメリットとして考えられるのは次の3点です。
経験が浅く、頼りない面も
勉強すれば知識は身に付けることができますが、経験だけはベテランの税理士にかないません。経験不足がミスにつながる可能性のあることは否定できないでしょう。
税務調査が不安
特に気になるのは、税務署に税務調査(※)に入られた時。経験不足ゆえに税務署の言いなりになってしまう可能性があります。
人脈も見劣りする
何十年もこの仕事に携わってきた税理士ならば、他の士業の人間なども含めて、多彩な人脈を築いていることが多く、それを生かして幅広いサポートを受けることもできます。
逆に、駆け出しの若手は、若手だからこそなのですが、人脈が乏しいことがほとんどです。
若手税理士だからこそ、実際に会ってみよう
今の「若手税理士のメリット・デメリット」は、裏返せば「ベテランのデメリット・メリット」ということになるでしょう。とはいえ、すべてが当てはまるわけではありません。
60代70代の先生でも最新の情報収集を怠らず、セミナーの講師を買って出ているような人も数多くいます。ITを自在に使いこなすベテラン先生もいます。若手なら必ずフットワークが軽いかといえば、そうではない場合もあるわけです。
ですから、これらは税理士選びの際の1つの参考として考えてください。大事なのは、実際に会って話してみて、自分の求める「一生懸命な若手の税理士」なのかどうか確かめることです。
若手税理士の探し方
ここまで若手税理士のメリット・デメリットやポイントを解説しましたが、探し方にも注意点があります。
実は、若手税理士だけでなく税理士業界全体にも言えるのですが、自所のホームページを持っていない・あるいは持ってはいるけども“持っているだけ”、な税理士が意外と多いのが現状。そのため、インターネットで検索したとしても検索結果には決して出てこない「優秀な税理士」もいるのです。
そのような税理士はどのように新しい顧問先と出会っているのでしょうか?
最近多いのは、顧問先紹介サービス(税理士紹介サービス)に登録して、新しい顧問先候補を紹介してもらう、という方法です。また、ネット広告を打ったり、セミナーや相談会を開催したり、SNS等でアピールしたり、動画サイトでコンテンツを公開したり…一昔前とは違い、様々な方法で発信できる現代だからこその方法もあります。
ただ、契約するとなると、上記の通り、実際に会って話せる税理士であることが重要です。もし自分で探してみて選択に迷ったら、実績のある税理士紹介サービスを使ってみるのも1つの方法です。
まとめ
若手の税理士には、年齢や経験からくるメリット・デメリットがあります。自身の状況や希望と照らし合わせて、若手税理士を選ぶか否か決めることが重要です。